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≪知財判例紹介「Bの都市伝説(コンビニコミック)」≫

平成23()35951 
損害賠償 著作権 民事訴訟 

平成250131日 東京地方裁判所

 

第1 事案の要旨

本件は,漫画各話(全体目次を含む。以下「本件漫画各話」という。)の作画(以下「本件各作画」と総称する。)を制作した原告が,本件漫画各話を掲載したコミックの初版,さらには増刷を発行した被告(株式会社竹書房)に対し,被告が上記コミックを増刷して発行した行為が本件各作画について原告が保有する著作権(複製権)の侵害行為に当たる旨主張して,被告に対し,著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。

第2 裁判所の判断

認定事実によれば,被告は,B執筆の書籍「Bの都市伝説」シリーズを原作とする漫画版として,複数の漫画家が作画した漫画各話を掲載したコンビニコミックである本件各コミックの出版を企画し,被告主張の本件各合意のそれぞれの合意の時期に,本件コミック1については作画原稿1枚当たり1万円の原稿料を,本件コミック2ないし6については作画原稿1枚当たり1万3000円の原稿料を支払うとの条件で,原告に対し,本件各作画の制作を順次依頼し,原告は,その都度これを了承したものであり,被告の上記各依頼の趣旨は,原告に対し,原告が本件各作画の制作を行うとともに,被告が本件各コミックに本件各作画を掲載して出版及び販売することについての利用許諾を求めるものであるから,原告が被告の上記各依頼を了承することにより,原告と被告との間で,本件各合意が成立したものと認められる。

そして,認定事実及び弁論の全趣旨を総合すれば,@本件各コミックと同種のコンビニコミックは,雑誌扱いの不定期の刊行物として,主にコンビニエンスストアで発売後約2週間程度販売された後,売れ残ったものが返品されるのが通常であり,初版の発売時にはあらかじめ増刷することは予定されていないが,これは事実上の取扱いであり,初版が返品された後であっても,需要があれば,増刷して発行することもあり得るものであり,コンビニコミックであるからといって,流通期間が性質上当然に限定されているとまではいえないこと,A被告は,上記各依頼に際し,原告に対し,上記原稿料以外の条件の提示をしていないのみならず,原告と被告との間で,原稿料以外の条件や本件各コミックの発行予定部数,流通期間等について話題となることはなかったことが認められる。

上記@及びAの事情に照らすならば,本件各合意に基づく原告の利用許諾の効力は,本件各コミックの初版分に限定されるものではなく,その増刷分についても及ぶものと認めるのが相当である。

以上のとおり,被告が本件各コミックを増刷して発行することについて,本件各合意に基づく原告の利用許諾があったものと認められるから,被告のかかる行為が本件各作画について原告が保有する複製権の侵害行為に当たる旨の原告の主張は理由がない。

 なお、本レポートは情報提供を主たる目的とするものであり、正式な見解をあらわすものではありません。

(弁理士 河嶋慶太)

以上